会社員を辞めてフリーランスになる手続き|退職前後のチェックリスト

目次

会社員を辞めてフリーランスになるとき、意外とつまずきやすいのが「手続き」です。

会社に任せていた健康保険や年金、税金を、これからは自分で切り替えていく必要があります。

しかも手続きには期限があるものが多く、うっかり過ぎると、医療費をいったん全額払うことになったり、保険料をまとめて払うことになったりします。

この記事では、退職の前後にやるべき手続きを、時系列のチェックリストで整理します。

「何を、いつまでに、どこで」だけ押さえれば、手続きで慌てることはなくなります。

なお、この記事は2026年10月時点の法令・制度をもとにしています。

退職から開業までの手続き全体像

細かい手続きに入る前に、退職から開業までの流れを時系列で整理しておきます。

全体像を先に押さえておくと、どの手続きをいつまでにやればいいかが一目でわかります。

時期やること期限・窓口
退職前書類の受け取り、住民税・企業型DCの確認在職中に会社へ
退職後健康保険と年金の切り替え翌日から14日以内(任意継続は20日)・市区町村
開業時開業届と青色申告承認申請書確定申告期限まで(青色は原則2か月)・税務署
希望者失業保険・再就職手当の相談早めにハローワーク
翌年給与と事業の所得を確定申告2月16日〜3月15日・税務署

期限がいちばん短いのは健康保険と年金

全体の中で期限がいちばん短いのは、退職直後の健康保険と年金です。

国民健康保険と国民年金は、退職日の翌日から14日以内に、住んでいる市区町村で手続きするのが原則です。

任意継続を選ぶ場合は、資格を失った日から20日以内に申し出る必要があります。

退職したら、ほかの手続きより先にここを片付けましょう。

税金の手続きは翌年の確定申告まで続く

一方で、税金まわりの手続きは、退職した翌年の確定申告まで続きます。

年の途中で会社を辞めて、その年のうちに再就職しなければ年末調整を受けられないため、会社員だった期間の給与も含めて自分で申告することになります。

退職のときに受け取る書類は、この申告で使うものが多いので、なくさないように保管しておきましょう。

退職前に会社でやっておくこと

まずは在職中、会社にいるあいだにしかできないことから片付けます。

とくに大事なのは、退職後の手続きで必要になる書類を確実に受け取っておくことです。

源泉徴収票と離職票を受け取る

源泉徴収票は、独立後はじめての確定申告で、会社員だった期間の給与を申告するのに使います。

離職票は、失業保険の手続きでハローワークに出す書類です。

失業保険を使うかまだ決めていなくても、会社には離職票の発行を頼んでおくと安心です。

国民健康保険や国民年金の手続きでも、退職日がわかる書類を求められることがあるので、届いた書類はまとめて保管しておきましょう。

退職金があるなら申告書を会社に出す

退職金を受け取る人は、「退職所得の受給に関する申告書」を会社に出しておきましょう。

この申告書を出しておけば、勤続年数に応じた退職所得控除を反映した税額が差し引かれ、原則として退職金について確定申告をする必要はありません。

出さなかった場合は、退職金の額に対して一律20.42%の所得税と復興特別所得税が差し引かれ、払いすぎた分は確定申告で取り戻すことになります。

住民税の残りがどう引かれるか確認する

住民税は前の年の所得をもとに決まるため、退職して収入が減っても、しばらくは会社員時代の所得に応じた額を払い続けます。

1月から4月に退職すると、5月31日までに支払われる給与や退職金が残りの住民税より多い場合は、原則として5月分までの残りがまとめて差し引かれます。

6月から12月に退職すると、残りは原則として自分で納める「普通徴収」に切り替わり、市区町村から納付書が届きます。

独立した直後の手元資金に響くので、いくら残っているかを会社の担当者に確認しておきましょう。

企業型DCに入っていたら移換先を決める

会社で企業型確定拠出年金(企業型DC)に入っていた人は、退職後にそのお金をiDeCo(個人型確定拠出年金)などへ移す手続きが必要です。

資格を失ってから6か月以内に手続きをしないと、国民年金基金連合会に自動で移され、運用されないまま手数料だけがかかる状態になります。

退職前に会社の担当者から、残高と手続きの案内を受け取っておきましょう。

資格確認書や貸与品を返す

会社から借りているパソコンや社員証などの返却スケジュールも、早めにすり合わせておきます。

従来の健康保険証は2025年12月2日以降使えなくなっており、有効期限内の「資格確認書」を持っている人は会社に返します。

退職日の翌日以降に前の会社の健康保険で受診すると、あとで医療費を返すことになるので注意してください。

あわせて、有給休暇の消化や最終出社日も確認しておきましょう。

クレジットカードやローンのように会社員の信用が効くものは、退職前に済ませておく人も多いので、フリーランスのクレジットカード|審査・選び方・独立前に作るべき理由もあわせて読んでみてください。

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ここがポイント

  • 源泉徴収票は「独立後の確定申告」で必ず使う
  • 離職票は「失業保険を使うか未定」でも受け取っておく
  • 退職金があるなら「退職所得の受給に関する申告書」を出す
  • 住民税の残りと企業型DCの移換は、退職前に会社へ確認する

健康保険は3つの選択肢から選ぶ

退職した翌日から、会社の健康保険には入っていない状態になります。

フリーランスの健康保険は、大きく3つの選択肢があり、どれが有利かは前年の所得や家族構成によって変わります。

選択肢特徴期限・窓口
国民健康保険前年の所得で保険料が決まる。扶養がなく家族の分もかかる退職日の翌日から14日以内・市区町村
任意継続前の会社の保険に最長2年。保険料は全額自己負担退職日の翌日から20日以内・前の健康保険
家族の扶養収入の条件を満たせば保険料なし。条件は保険ごとに違う家族の勤務先を通じて

国民健康保険は前年の所得で保険料が決まる

国民健康保険の保険料は、前の年の所得などをもとに、住んでいる市区町村が計算します。

独立1年目は会社員時代の給与が基準になるため、収入が下がっても保険料はすぐには下がりません。

届け出が遅れても、加入は退職日の翌日にさかのぼり、その月からの保険料をまとめて払うことになります。

届け出る前に病院にかかると、いったん医療費を全額自分で払うことになる場合もあるので、退職したら早めに手続きしましょう。

任意継続は最長2年・会社負担分がなくなる

任意継続は、退職前の健康保険に、最長2年まで個人で入り続けられる制度です。

退職日までに継続して2か月以上加入していたことが条件で、資格を失った日から20日以内に申し出る必要があります。

在職中は会社が保険料の半分ほどを負担していましたが、任意継続では全額を自分で払います。

ただし保険料の計算に使う月額には上限があり、たとえば協会けんぽでは令和8年度の上限は32万円なので、在職中の給与が高かった人ほど割安になりやすい仕組みです。

今は本人が申し出れば、2年たつ前でも任意継続をやめて、国民健康保険などに切り替えられます。

家族の扶養に入れるのは収入が少ないあいだだけ

配偶者などが会社員なら、その健康保険の扶養に入れば、自分の保険料はかかりません。

原則の目安は、これからの年収の見込みが130万円未満(60歳以上や一定の障害がある人は180万円未満)で、同居なら扶養する人の収入の半分未満であることです。

ただしフリーランスの事業収入をどう数えるか(売上で見るのか、経費を引いた額で見るのか)は健康保険ごとに違い、事業を始めると扶養に入れない扱いのところもあります。

独立初期だけ扶養に入り、収入が増えたら国民健康保険に切り替える人もいるので、まずは家族の勤務先に条件を聞いてみましょう。

会社都合の退職なら国民健康保険が軽くなる

倒産や解雇など会社の都合で退職した人は、国民健康保険の保険料が軽くなる制度があります。

退職した日に65歳未満で、雇用保険で「特定受給資格者」や「特定理由離職者」にあたる人が対象です。

前の年の給与所得を3割として保険料を計算するため、会社員時代の給与が高かった人ほど効果があります。

ハローワークで受給資格の決定を受けたときの書類が必要になるので、該当しそうな人は、市区町村の窓口で確認してみてください。

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ここに注意

  • 国民健康保険と国民年金の切り替えは「退職日の翌日から14日以内」が原則
  • 任意継続は「資格を失った日から20日以内」で、過ぎると入れない
  • 退職日の翌日以降に前の会社の健康保険で受診すると、医療費を返すことになる
  • 保険料や必要書類は自治体・健康保険ごとに違うので、市区町村や加入していた健康保険で必ず確認する

年金は国民年金に切り替える

会社員のあいだは厚生年金に入っていましたが、退職後は国民年金に切り替えます。

健康保険と同じく、期限が短い手続きです。

退職日の翌日から14日以内に市区町村で手続きする

20歳以上60歳未満の人は、退職後は国民年金の「第1号被保険者」になります。

退職日の翌日から14日以内に、住んでいる市区町村の窓口で切り替えの手続きをするのが原則です。

基礎年金番号がわかるものや、退職日がわかる書類を持っていくとスムーズです。

扶養していた配偶者も切り替えが必要になる

見落としやすいのが、扶養していた配偶者の年金です。

会社員の配偶者として「第3号被保険者」だった人は、本人が退職すると、配偶者も第1号被保険者に切り替わります。

配偶者の分も自分で保険料を払うことになるので、14日以内に一緒に手続きを済ませておきましょう。

払うのが厳しいときは免除や猶予を相談できる

独立直後で収入が不安定なら、保険料の免除や納付猶予を申請できます。

失業による特例では、失業した本人の前年の所得をゼロとして審査するため、会社員時代の収入が高くても認められる場合があります。

ただし、免除では配偶者や世帯主、納付猶予では配偶者の所得も審査されるため、必ず認められるわけではありません。

未納のまま放っておくと、将来の年金が減るだけでなく、障害年金を受け取れなくなることもあるので、払えないときは申請しておきましょう。

収入が安定したら上乗せの制度を検討する

国民年金だけだと、厚生年金に入っていた会社員時代より、将来受け取る年金が少なくなりやすいです。

付加年金や国民年金基金、iDeCo、小規模企業共済は、老後の備えになりながら、掛金が所得控除の対象になる制度です。

ただし付加年金と国民年金基金は、どちらか一方しか入れません。

iDeCoにすでに入っている人は、会社員から自営業者への区分の変更を届け出る必要があります。

無理のない範囲で、収入が安定してきたタイミングから少しずつ始めるのがおすすめです。

開業届と青色申告承認申請書を出す

保険と年金が片付いたら、税務署への手続きに移ります。

ここで出すのは、開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)と、青色申告承認申請書の2つです。

開業届は開業した年分の確定申告期限まで

開業届は、事業を始めた年分の確定申告の期限までに出せばよいことになっています(国税庁|個人事業の開業届出・廃業届出等手続)。

以前は「事業を始めてから1か月以内」とされていたため、古い情報が残っているサイトもあります。

提出先は住所地などを管轄する税務署で、e-Taxでも書面でも出せます。

期限に余裕があるとはいえ、次の青色申告承認申請書と一緒に、早めに出しておくのが確実です。

青色申告承認申請書は開業から2か月以内

節税を考えるなら、あわせて出したいのが青色申告承認申請書です。

1月16日以後に開業した場合は、開業した日から2か月以内に出す必要があります(国税庁|No.2070 青色申告制度)。

1月15日以前に開業した場合は、その年の3月15日までです。

この期限を過ぎると、その年は青色申告ができず、最大65万円の青色申告特別控除などを使えません。

なお、令和9年分からは、複式簿記で記帳して期限内にe-Taxで申告すると65万円、それに加えて優良な電子帳簿の保存などの要件を満たすと75万円になり、書面で申告すると最大10万円に変わる予定です。

青色申告のメリットや、実際の申告の進め方はフリーランスの青色申告・確定申告|1年目のやり方と白色との違いで詳しくまとめています。

年の途中で辞めたら翌年は確定申告で精算する

年の途中で独立し、その年のうちに会社へ再就職しない場合は、その年の給与について年末調整を受けられません。

事業の所得を申告する必要がある人は、翌年2月16日から3月15日までの確定申告で、会社員だった期間の給与と、フリーランスになってからの事業の所得をまとめて申告します。

退職前に受け取った源泉徴収票は、このときに使います。

開業した日から、仕事に使ったパソコンや通信費などは経費にできるので、何が経費になるかはフリーランスエンジニアの経費|PC・AIツール・家賃の線引きを参考にしてください。

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ここがポイント

  • 開業届は「開業した年分の確定申告期限まで」
  • 青色申告承認申請書は、1月16日以後の開業なら「開業から2か月以内」
  • 2枚はセットで同時に提出すると出し忘れない
  • 年の途中で退職したら、翌年の確定申告で給与もまとめて申告する

失業保険(雇用保険)はどう扱うか

「退職したら失業保険をもらえる」と考えている人は少なくありません。

ただし失業保険(基本手当)は、あくまで「次の仕事を探して求職活動をする人」への給付です。

フリーランスとして独立する人が使える制度は、基本手当とは別にあります。

開業や開業準備に専念すると基本手当は受けられない

事業を始めたり、開業の準備に専念したりしている人は、失業の状態とは扱われません。

開業届を出したかどうかではなく、実際に事業を始めたか、準備に専念しているかで判断されます。

事業を始めた、または開業の準備に専念している事実を申告せずに基本手当を受けると、不正受給として返還を求められるおそれがあります。

条件しだいで再就職手当の対象になる

一方で、ハローワークで受給資格の決定を受けたあとに事業を始めた場合は、「再就職手当」の対象になることがあります。

受給資格が決まったあとの待期の7日間が過ぎてから開業していることや、基本手当の支給残日数が3分の1以上残っていることなどが条件です。

自己都合の退職で給付制限がある場合(2025年4月以降の退職は原則1か月)、待期が明けてから1か月のあいだは、ハローワークなどの紹介による就職しか対象にならないため、この時期の開業は対象外です。

ほかにも条件があるので、開業日を決める前にハローワークで確認しておきましょう。

受給期間の特例で廃業したときに備えられる

基本手当を受け取れる期間は、原則として退職した翌日から1年間です。

2022年7月から、退職後に事業を始めた人は、事業をしている期間を最長3年まで、この1年に数えない特例を申請できるようになりました(厚生労働省|雇用保険受給期間の特例)。

特例を申請しておけば、もし事業をやめて再就職活動をすることになっても、その時点で基本手当を受け取れる可能性があります。

申請できるのは事業を始めた日(または事業や準備に専念し始めた日)の翌日から2か月以内です。

事業を30日以上続けていることや、その事業で再就職手当や就業手当を受けていないことなどの要件があります。

独立がうまくいかなかったときの保険になるので、退職後に開業する人は覚えておきましょう。

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ここに注意

  • 開業や開業準備に専念すると、基本手当は受けられない
  • 再就職手当は、待期の7日間が過ぎてからの開業などが条件
  • 受給期間の特例は、事業を始めた日などの翌日から2か月以内に申請する
  • 開業日と給付の関係は、開業前にハローワークへ相談する

退職前後の手続きでつまずきやすいポイント

ここでは、退職から独立までの手続きで、多くの人が迷いやすいポイントを取り上げて整理します。

健康保険は国保と任意継続のどちらが得なのか

これは前年の所得と、前職での保険料の水準、家族の人数によって変わります。

在職中の給与が高かった人や、扶養している家族が多い人は、当面は任意継続のほうが安く収まることがあります。

国民健康保険には扶養の仕組みがなく、家族の人数に応じて保険料がかかるためです。

逆に、独立1年目の所得が会社員時代より下がれば、2年目からは国民健康保険の保険料も下がるので、途中で切り替えるほうが有利になることもあります。

市区町村の窓口と、加入していた健康保険の両方で保険料を聞き、金額を並べて比べてから決めると失敗しにくくなります。

開業届は退職前と退職後のどちらに出すのか

会社員のうちに副業として開業届を出すこともでき、退職を待つ必要はありません。

ただし失業保険の再就職手当や受給期間の特例を使いたい人は、退職後に事業を始めていることが前提になるので、開業日の決め方に注意が必要です。

失業保険を使わないなら、青色申告承認申請書の期限に間に合うように、開業届とあわせて早めに出しておけば十分です。

副業を続けながら独立のタイミングを見極めたい人は、副業からフリーランスへ|移行のタイミングと判断基準・失敗しない準備も参考にしてください。

手続きの期限を過ぎてしまったらどうなるのか

国民健康保険や国民年金の14日という期限を過ぎても、手続き自体はできます。

ただし加入は退職日の翌日にさかのぼるため、さかのぼった分の保険料をまとめて払うことになります。

任意継続の20日を過ぎた場合は、原則として入れなくなるので、国民健康保険か家族の扶養を選ぶことになります。

青色申告承認申請書が間に合わなかった場合は、その年は白色申告になり、翌年分から青色申告を使うために、翌年の3月15日までに申請書を出します。

気づいた時点で、すぐに窓口に相談するのがいちばんの対処法です。

まとめ

会社員からフリーランスへの切り替えは、やること自体はシンプルですが、「期限」だけが要注意です。

退職前に源泉徴収票や離職票をそろえ、住民税や企業型DCの扱いを会社に確認しておきます。

退職日の翌日から14日以内に健康保険と年金を切り替え、扶養していた配偶者の年金も忘れずに手続きします。

開業届は開業した年分の確定申告期限までですが、青色申告承認申請書は原則2か月以内なので、2枚セットで早めに出しておきましょう。

失業保険を考えている人は、開業日を決める前にハローワークで再就職手当や受給期間の特例を確認しておくと安心です。

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