会社員を辞めてフリーランスになるとき、意外とつまずきやすいのが「手続き」です。
会社に任せていた健康保険や年金を、これからは自分で切り替えていく必要があります。
しかも手続きには期限があるものが多く、うっかり過ぎると保険が使えない期間ができてしまうこともあります。
この記事では、退職の前後にやるべき手続きを、時系列のチェックリストで整理します。
「何を、いつまでに、どこで」だけ押さえれば、手続きで慌てることはなくなります。
退職から開業までの手続き全体像
細かい手続きに入る前に、退職から開業までの流れを時系列で整理しておきます。
全体像を先に押さえておくと、どの手続きをいつまでにやればいいかが一目でわかります。
| タイミング | やること | 期限・窓口 |
|---|---|---|
| 退職前 | 源泉徴収票・離職票の受け取り確認、任意継続の可否を確認 | 在職中に会社へ |
| 退職直後 | 健康保険と国民年金の切り替え | 14日以内/市区町村(任意継続は20日以内) |
| 開業時 | 開業届と青色申告承認申請書の提出 | 1か月以内/2か月以内・税務署 |
| 必要な人 | 失業保険(再就職手当)の相談 | 早めにハローワーク |
退職前に会社でやっておくこと
まずは在職中、会社にいるあいだにしかできないことから片付けます。
とくに大事なのは、退職後の手続きで必要になる書類を確実に受け取っておくことです。
源泉徴収票は、独立後はじめての確定申告で必要になります。
離職票は、失業保険を検討する場合にハローワークで使う書類です。
健康保険を「任意継続」にする可能性があるなら、退職前に会社の担当者へ手続き方法を確認しておくとスムーズです。
あわせて、有給休暇の消化や、貸与された備品・保険証の返却スケジュールもすり合わせておきましょう。
ここがポイント
- 源泉徴収票は「独立後の確定申告」で必ず使う
- 離職票は「失業保険を使うか未定」でも受け取っておく
- 任意継続を考えるなら退職前に会社へ確認
退職直後にやる保険と年金の切り替え
退職した翌日から、健康保険と年金は「自分で入り直す」状態になります。
ここが一番期限がタイトなので、退職後まっさきに動く部分です。
健康保険は3つの選択肢から選ぶ
フリーランスの健康保険は、大きく3つの選択肢があります。
どれが有利かは、前年の所得や家族構成によって変わります。
| 選択肢 | 特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 国民健康保険 | 前年の所得をもとに保険料が決まる。手続きは住んでいる市区町村。 | 前年の所得が低め/扶養に入れない人 |
| 任意継続 | 退職後20日以内に手続きが必要。最長2年、保険料は会社負担分もなくなるが上限あり。 | 前職の保険料が高すぎず、すぐ切り替えたい人 |
| 家族の扶養 | 収入の要件を満たせば保険料の負担なし。配偶者などの勤務先で手続き。 | 独立初期で収入が少ない見込みの人 |
国民健康保険は退職から14日以内、任意継続は20日以内と、期限が違う点に注意してください。
迷ったときは、両方の保険料を試算して総額を比べると判断しやすくなります。
年金は国民年金へ切り替える
会社員のあいだは厚生年金でしたが、退職後は国民年金に切り替えます。
こちらも退職から14日以内に、市区町村で手続きするのが原則です。
収入が不安定で保険料の支払いが厳しい時期は、免除や猶予の制度を相談できる場合もあります。
国民年金は厚生年金より将来の受取額が少なくなりやすいため、余裕が出てきたら上乗せを検討すると安心です。
付加年金や国民年金基金、iDeCo、小規模企業共済などは、老後の備えになりながら掛金が所得控除の対象になる制度です。
無理のない範囲で、収入が安定してきたタイミングから少しずつ始めるのがおすすめです。
ここに注意
- 健康保険(国保)と年金の切り替えは「退職から14日以内」が原則
- 任意継続を選ぶ場合は「20日以内」とさらに短い
- 期限や必要書類は自治体で違うため、住んでいる市区町村・年金事務所で必ず確認する
開業届と青色申告の申請を出す
保険と年金が片付いたら、税務署への手続きに移ります。
開業届は、事業を始めてから1か月以内に提出するのが原則です。
そして節税を考えるなら、あわせて出したいのが「青色申告承認申請書」です。
青色申告承認申請書は、原則として事業開始から2か月以内に提出する必要があります。
この2枚は同じタイミングで一緒に出してしまうと、出し忘れを防げます。
青色申告のメリットや、実際の申告の進め方はフリーランスの確定申告|やり方・必要書類・青色白色の違いで詳しくまとめています。
ここがポイント
- 開業届は事業開始から「1か月以内」
- 青色申告承認申請書は原則「2か月以内」
- 2枚はセットで同時に提出すると出し忘れない
失業保険(雇用保険)はどう扱うか
「退職したら失業保険をもらえる」と考えている人は少なくありません。
ただし失業保険(基本手当)は、あくまで「次の就職を目指して求職活動をする人」への給付です。
そのため開業届を出してフリーランスとして活動を始めると、原則として基本手当の対象からは外れます。
一方で、要件を満たせば「再就職手当」の対象になるケースもあります。
開業のタイミングと給付の関係は判断が難しいので、独立を決めたら早めにハローワークで相談しておくのが安全です。
ここに注意
- 開業届を出すと、失業保険の基本手当は原則もらえなくなる
- 条件しだいで「再就職手当」の対象になる場合がある
- 開業の時期と給付の扱いは、事前にハローワークへ相談する
退職前後の手続きでつまずきやすいポイント
ここでは、退職から独立までの手続きで多くの人が迷いやすいポイントを2つ取り上げて整理します。
健康保険は国保と任意継続のどちらが得なのか
これは前年の所得と、前職での保険料の水準によって変わります。
前年の所得が高かった人は、当面は任意継続のほうが安く収まることもあります。
逆に、独立で収入が下がる見込みなら、国民健康保険のほうが有利になっていくケースもあります。
どちらも保険料を試算できるので、金額を並べて比べてから決めると失敗しにくくなります。
開業届はいつ出せばいいのか
開業届は、事業を始めた日から1か月以内が原則です。
ただ、青色申告を使いたいなら「2か月以内」という申請書の期限のほうが実質的なリミットになります。
迷ったら、開業届と青色申告承認申請書を同じ日にまとめて出してしまうのが確実です。
まとめ
会社員からフリーランスへの切り替えは、やること自体はシンプルですが「期限」だけが要注意です。
退職前に書類をそろえ、退職後14日以内に保険と年金、そして早めに開業届と青色申告を出す。
この流れさえ押さえておけば、手続きでつまずくことはほとんどなくなります。
独立そのものの進め方を確認したい人は会社員からフリーランスになるためには?失敗を減らす6つのステップを、独立後のお金まわりはフリーランスの確定申告とあわせて読んでみてください。